あなどれないね、世唯くん。
思わず見惚れてしまうくらい……。
視線が絡み合うこと数十秒。
「……なんか今日、余裕ないかも」
前髪をくしゃりとかきあげる仕草にすら、ドキッとする。
「余裕、ないの……?」
「ないよ。糸羽見てたら我慢なんて言葉どっかに飛んでいきそうになるから」
「っ……」
「あーあ、何もしないつもりだったのに」
ジッと見つめると、
大きな手のひらが、優しくわたしの頬を包み込んで。
「……今、糸羽が欲しくてたまんない」
声まで余裕がなさそうで。
我慢をしてくれているのか、つらそうに見えてくる。
世唯くんはきっと、わたしのペースに合わせていつもキス以上のことはしてこない。
付き合ってだいぶ経つけれど、世唯くんからキス以上のことは求められなかった。
でも、きっとそれはわたしに合わせてくれているから。
「……情けないね、我慢もできないとか」
「そ、そんなこと、ないよ」