あなどれないね、世唯くん。
すると、世唯くんがムッとした顔を見せた。
ほんのわずかの表情の変化でもわかりやすい。
普段がまったく崩れないから。
「……いとが悪いんだよ」
「え、わたし?ちゃんと教科書見せてあげてるじゃん」
どうやら機嫌が悪いのはわたしが原因みたいだけど、なんでかわかんない。
「いとのそーゆー鈍感なとこ嫌い」
「……?」
「……だからお仕置きね」
「おし、おき…?」
え、なんだか聞きなれないというか、若干恐ろしい言葉が聞こえたような…。
「ほんとは今すぐ糸羽にキスしたいなーって」
「……っ!?」
「……俺以外の男とたのしそーに話す可愛くない唇は塞いであげないとね」
妖艶な笑みを浮かべながら、危険なことを言って。
繋がれていないほうの手がわたしの顔のほうに伸びてきて。
「この甘い唇は……俺の」
「っ、」
世唯くんの人差し指がわたしの唇に触れた。
グッと、指先を押し付けてくる。