あなどれないね、世唯くん。



***


「うぅ、ちょっとほんとに無理……です」

放課後。
文化祭の居残りはないから帰れるはずだったのに、今わたしはとんでもない窮地に追い込まれている。


「なんで?それ着た姿見せてくれたら昼めし食べるの解放するって言ってんじゃん」

廊下のほうから催促をする藍野くんの声。


ちなみにわたしは今誰もいない教室で、とあるものを着ているせいで恥ずかしくてたまらない。


「早く出てきてくれないと、花町が普段昼休みにどこに行くかついていこーかなー」

「そうやって脅さないでよ…」


扉一枚越しに聞こえる藍野くんの声はいつもよりだいぶイジワル。

お昼休み、ある条件を出されたせい……。


『その代わり━━━━花町がメイド服着てる姿見せてほしい』


本来、文化祭で着なくてもいいはずだったのに…。

まさかこんな展開で着ることになるなんて。


目線を少し下に落とせば、ヒラヒラと揺れるワンピースのフリルが目に入る。

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