あなどれないね、世唯くん。



「なぁ、もういっこお願い聞いてよ」

「な、なんで」


「聞いてくれないなら、口塞ぐけどいい?」

「じょ、冗談やめて…っ」


「冗談じゃない、本気」

力じゃ敵わないって証明するように、わたしの手首を片手で簡単につかむ。

たぶん、抵抗しても勝てっこない。


「わ、わかった……から」

これ以上迫られたら、身がもたないのでおとなしく言うことを聞くことに。


「んじゃ、今から俺のこと真尋って呼んで」

「な、なんでそんな急に」


「いいから。あと5秒数えて呼ばないなら覚悟してもらわないとなー」

……強引。
男の子の名前なんて、みんな苗字でしか呼ばない……世唯くん以外は。


「ま……ひ…ろくん」

「ん?聞こえない」


「ま、真尋……くん……っ」

恥ずかしさのあまり、無意識に藍野くんのシャツを手でキュッと握って、瞳が涙でうるむ。


「あー……だいぶ限界。
可愛すぎて耐えられない……」

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