魔法に囚われて〜誘拐されて溺愛されてます〜

シャノン王国、世界の西にある大国。経済が発展し、きれいな街並みは多くの観光客を虜にしている。

その王国には、一部の人間しか知らないことがある。

それはーーー。



シャノン王国の田舎町。この小さな村では農業が主な仕事だ。男女関係なく働き、みんなが助け合って生きている。

村の中心にある小さな建物。花が飾られ、そこを訪れる人々を安心させている。

「すみません、息子が熱を出してしまって……」

三十代前半のエプロンをつけた女性がぐったりした小さな男の子を抱き抱え、やって来る。

「では、すぐに診ましょう」

銀色の長い髪に紫の目の整った顔立ちの女性が診察台に乗せられた男の子の胸に聴診器を当てる。彼女は医師だ。

「熱はいつから出始めましたか？」

「昨日の夜からです」

「他に症状は？」

「くしゃみや喉の痛みを訴えていました」

医師の問いに三十代前半の女性が答える。医師はテキパキと熱を計り、喉を見たりする。