見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
授かり婚を推奨されるとは予想外ですが
五月も下旬に差しかかったある日の夜。ひと足先にお邪魔した周さんの寝室で、私はソファに座って久しぶりに母と電話をしていた。
話しながら、腰に巻いた浴衣のこしぼちりめん帯を意味もなく弄る。
実は先日、周さんと部屋着代わりの浴衣を選んできたのである。柔らかなベージュの生地に、淡いパステルカラーの紫陽花の柄がとても可愛らしいものだ。
彼は女性の浴衣選びなど興味ないだろうか、と最初は懸念していたが、意外にも私に似合うものを真剣に吟味して買ってくれた。
その最中、『希沙はちんちくりんで童顔だから……』だのなんだのと、さらっと直球を投げられたのは言わずもがな。
それでもとっても嬉しかったし、女子力が格段に上がった気がする。周さんの隣に並んでも、前よりは恥ずかしくない。
蝶結びにした深緑の帯を目に映しながら、トレヴァーさんたちをおもてなししたときのことを、テンション高めに話し続ける。
「でね、そのトレヴァーさんがお茶を飲んで『Brilliant!』って言ったの。それだけは聞き取れた」
『〝ブリリアント〟ってどういう意味?』
「〝素晴らしい〟だって」
『へえ、すごいじゃない』