見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
伏せていた彼の瞼がゆっくり押し上げられる。その瞳はいつにも増して澄んでいて、温かさと切なさが交じり合ったような色をそこはかとなく感じる。

次の瞬間、身体をさらにしっかりと抱き寄せられ、耳元で「ありがとう」と優しい声が響いた。

私を頼ろうとしてくれているのだとしたら、とても嬉しい。それに比例して、もっと彼の心に寄り添いたい、もう手離せなくなるほど愛されたい、と貪欲な想いが募る。

私たちはまだ両想いにすらなっていないのに、どんどん欲張りになる自分がもどかしくて、彼の浴衣をきゅっと掴んだ。


 *

周さんのご両親が一時帰国するという連絡が入ったのは、それからすぐのこと。六月の中旬頃になるらしく、その機会に私も顔合わせをすることになった。

ご両親が家に来てがっかりしないよう、六月の第一週の土曜日である今日は、休みなので朝から庭の草むしりをしている。

本来なら、こんなにも面倒な奉仕活動はしたくない。正直、こっそり除草剤を撒いてしまいたい。

でも、あえてこの作業をすることで怠けた精神を鍛え直せるかもしれないと思い、無心で雑草をむしっている。まあつまり、完全なる自己満足だ。
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