見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

お決まりの農作業スタイルで引っこ抜いた雑草をゴミ袋に入れていたとき、門のほうから私がいる玄関に向かって誰かがやってくる気配がした。

そちらを振り返れば、女優と見紛うほどの美貌の中年女性が歩いてくる。ふんわりとしたショートヘアで、白を基調とした服装も洗練された人だ。

誰だろう、と不思議に思いながら目で追っていると、彼女もこちらに気づいて品よく微笑む。


「こんにちは。ご苦労様」


私はその場に立ち上がり、「こんにちは……！」と会釈した。

その瞬間、あれ？とあることに気づいて首を傾げる。今、門の鍵は開けていないのだ。

暗証番号を入れるタイプだが、番号を知っている人は周さんの家族と藪さん、そしてほのかちゃんだけのはず。他にもいたのだろうか。


「あの、すみませんが、どちら様でしょうか？」


困惑しつつ、玄関のドアに手を伸ばす女性に遠慮がちに声をかけてみた。

彼女はこちらを振り向き、わずかな笑みを湛えて快く答える。


「ああ、私は周の母です。怪しい者ではないわ」

「おっ、お母様!?」


予想外の返答に、私はのけ反る勢いで驚愕の声を上げてしまった。だって、今日帰ってくるなんて聞いていないから！