見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
じんとする私に、神妙な面持ちのお母様が視線を移して問いかける。


「希沙さんはどう? 一般家庭から旧華族の家に嫁ぐとなると、これからいろいろと大変よ。気持ちが変わらないと言い切れる?」


私の母と似たことを忠告され、今一度気を引きしめる。

きっと、大変さはそのときにならないとわからないだろう。今、想像しきれないことも当然起こり得るのだから。

だとしても、彼と苦楽を共にする前から諦めることなどしたくない。


「私は、苦労することも覚悟の上でここへ来ました。なにがあっても、周さんと共に生きていきたいです」


お母様をまっすぐ見つめ返し、今の私の嘘偽りのない思いを宣言した。

ふと隣から視線を感じてゆっくり振り向けば、なにか言いたげな、情熱を含んだ瞳に捉えられる。なぜだか目を逸らせない。

視線を絡ませたままの私たちを見ていたお母様は、ひとつ息を吐き出した。


「……ふたりの気持ちはわかったわ。そこまで言うのなら、あなたたちを信じましょう」


納得したように頷く彼女に笑みはないものの、認めてもらえて少し緊張が解けた。
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