見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「一柳家は子孫を残さなければならない。その義務を果たすことが難しいとしたら、結婚しても苦痛を強いられるだけ。一年経っても授からなければ、考え直したほうがいいわ」


続けて厳しい声が投げられ、心が重く軋む音がした。

一年以内に妊娠しなければ不妊症だと、以前心晴さんが教えてくれた。もしも私がそうだったら、周さんの妻にはなれないかもしれない──。

現実を突きつけられて、一気に不安が襲ってくる。

一柳家に嫁ぐなら、子供を産むことが必須であるともちろんわかっていたが、どうして私は、避妊さえしなければ自分が妊娠できるものと信じていたんだろう。そんなこと、まだわからないのに。

でも、妊娠しなかったら結婚できないなんて、それじゃまるで……。


「あなたは跡取りが欲しいだけなんだろう。それは重々承知しているが、俺は子供を作るためだけに希沙を必要としているわけじゃない」


周さんが、かすかな怒りを滲ませた声で私の気持ちを代弁してくれた。

お母様の考えもわかるが、子供を産めなければ私には価値がないと烙印を押されるような気がしてしまう。それとも、名家に嫁ぐとはそういうことなのだろうか。
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