見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
そのあとは子作りの話はせず、ヒトツヤナギの事業についてや、私の実家の話などをして比較的和やかな雰囲気だった。
お母様は厳しい部分もあるけれど、私の話もよく聞き、適度に笑ってくれる人。性格も周さんとよく似ているものの、愛想のよさではお母様が上だ。
私を毛嫌いすることもなく、『来週、紫蘭のイベントがあるからふたりで行ってきたら?』と提案して、この家をあとにした。
紫蘭とは、富裕層の方々が入会を認められている会員制社交クラブのことで、毎月なにかしらのイベントを開催しているらしい。
周さんも会員になっているので、その同伴者として私も参加できるそう。お母様は都合が悪く行けないが、私がこういう場に慣れるためにも行ってきたらどうか、とのことだ。
会員制のクラブといえば、旧華族だけが入ることを許される霞会館が有名だが、今回はそこまでハードルが高いものではない。
とはいえ、慣れていないのは確かなので、さっそく一般家庭から飛び込む大変さを感じるのだった。
お母様を見送ったあと、玄関ホールに佇んだまま、周さんが珍しく気まずそうに謝る。