見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
ダイニングテーブルに座る私は、その後ろに立つほのかちゃんと、スマホの画面に映るフォーマルな格好をした男性を眺めている。

藪さんもほのかちゃんの横にやってきて、スマホを覗き込む。


「誰、これ」

「藪さん知らないんですか? 世界的に有名なピアニスト……って書いてありますよ」

「ほのちゃんも知らないんじゃん」


息ぴったりのやり取りがおかしくて、私クスクスと笑った。

調べたところ、例のイベントは一流ピアニストのディナーショーらしい。そんな敷居の高いイベントなど未知の世界だ。

貴重な体験ができるのはありがたいことだが、まずドレスコードから悩んでしまう。


「スマートカジュアルってどんな服を着ていけばいいんだろ」


記されたそれを見て首をひねる私に、藪さんが教えてくれる。


「フォーマルほどかしこまらず、普段着よりはきちんとした服装だよ。ほら、女子アナウンサーみたいな」

「ああ、わかりやすい!」


上品で清楚なスタイルってことね。と、しっかりイメージできたものの、自分のクローゼットの中を思い返してみたところ、うーんと唸ってしまう。

友達の結婚式にはだいたい着物を着ていくし、あっても若いときに来ていたものだから年相応じゃないだろうな……。
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