見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
部屋まであとわずかの距離を歩くのももどかしく、ドアを開けて中に入った瞬間に、抱き合ってキスを交わした。

バッグが手から滑り落ちたのも気にせず、ドアに背中を預けて、熱い吐息と舌を絡ませ合う。

呼吸が乱れてきた頃、リップ音を響かせて唇が離された。とろんとした私の瞳には、熱に浮かされたかのごとく色っぽい彼の顔が映る。


「……心から誰かを欲しくなるのは初めてだ。家のことも、どうでもいい。こんなふうになる理由は、君を愛している以外にない」


周さんは愛おしそうに髪を撫で、私がずっと欲しかった言葉を与え続ける。恋愛が苦手な彼が、気持ちを伝えてくれているだけで胸がいっぱいだ。


「大雑把であか抜けないところも、着物を着ると人が変わったように凛とするところも、俺の心に入り込んで揺さぶってくるところも、全部……希沙のすべてが好きだ」


言葉の最後に、とても優しい笑みがこぼされ、胸の奥から愛しさが湧き上がった。ついでに涙まで込み上げてきて、瞳を潤ませて彼の想いに応える。


「私も、大好きです」


周さんは、なんとか笑顔で告白する私の目尻にキスを落としたあと、軽々と抱きかかえて広いベッドへと向かった。
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