見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「あ~、お茶美味しかったし、心が洗われたよ。もっと早くにここへ来て煎茶道に触れておくべきだったな」
すっかり明るくなった彼に、私は道具を片づけながら「気分転換になったならよかったです」と言って胸を撫で下ろした。
どうやら彼が言う〝責任〟は、私がお点前を見せることで果たされたらしい。恐ろしい言い方をしないでほしい……と内心苦笑を漏らした。
すると、富井さんが落ち着いた口調で語り始める。
「君のお点前を見ながら、どうしてスランプに陥ったのか考えてたら、なんとなくわかった気がする」
彼が病んでいたのはどうしてだったのか気になるので、私は道具をしまう手を止めて耳を傾ける。
「俺の先祖は、華族になりたかったけど条件を満たせなくて拒否されたらしくてね。それが代々伝わって、富井家は華族に恨みを持つようになった」
「そうだったんですか……」
思わぬ事情に、私は驚きつつ表情を曇らせた。
彼はおもむろに立ち上がり、腕組みをして窓際へとゆっくり歩いていく。鹿威しが鳴る日本庭園を眺めるその横顔は、真面目なものになっていた。
すっかり明るくなった彼に、私は道具を片づけながら「気分転換になったならよかったです」と言って胸を撫で下ろした。
どうやら彼が言う〝責任〟は、私がお点前を見せることで果たされたらしい。恐ろしい言い方をしないでほしい……と内心苦笑を漏らした。
すると、富井さんが落ち着いた口調で語り始める。
「君のお点前を見ながら、どうしてスランプに陥ったのか考えてたら、なんとなくわかった気がする」
彼が病んでいたのはどうしてだったのか気になるので、私は道具をしまう手を止めて耳を傾ける。
「俺の先祖は、華族になりたかったけど条件を満たせなくて拒否されたらしくてね。それが代々伝わって、富井家は華族に恨みを持つようになった」
「そうだったんですか……」
思わぬ事情に、私は驚きつつ表情を曇らせた。
彼はおもむろに立ち上がり、腕組みをして窓際へとゆっくり歩いていく。鹿威しが鳴る日本庭園を眺めるその横顔は、真面目なものになっていた。