見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「大人になって、そんな馬鹿馬鹿しい確執はなくしていけたらなって思ってた。今度あいつに会ったら、これまでの態度を改めて普通に接するつもり……だったのに」


富井さんなりに関係をよくしようとしていたことがわかり、感心したのもつかの間、今度は彼がこちらに向かってくる。

そして、私のすぐそばに膝をつき、どこか挑発的な眼差しをまっすぐ向ける。


「イチの隣には婚約者がいた。あどけない可愛さと、あいつに恋してる綺麗さを併せ持つ君がね」


視線を絡ませてそんなふうに言われ、ドキリと心臓が動いた。突然、こちらに矛先が向けられるものだから身構えてしまう。


「なにもかも手に入れて、順風満帆な人生送ってんだもんなぁ。嫉妬心が湧いてきて結局変われなかった。そんな自分に自己嫌悪して、だんだんネガティブ思考になって……それがスランプのきっかけだったんだ、きっと」


遠い目をして吐露した彼は、私に目線を戻し、「原因がわかっただけでスッキリしたよ。ありがとう」と穏やかに笑った。

そうか……。富井さんは、周さんとの関係を修復したい自分と、羨む自分とがせめぎ合って、気持ちのバランスが崩れていたのね。

私に跡取り問題のことを教えてきたのも、嫉妬心からだったのかもしれない。
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