見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「ほのかちゃん、今度藪さんと映画見に行くんでしょ? 進展があるといいな〜」


チケットをもらった彼女が、ダメもとで藪さんを誘ったらOKだったのだそう。ついこの間その報告を受けてから、私はふたりの今後が楽しみで仕方ない。

しかし、ニンマリする私に対し、ほのかちゃんはうっすら頬を染めて口を尖らせている。


「たまたま予定がなくて、藪さんも見たい映画だったからOKをもらえただけで、きっとなにもないですよ」

「いやーでも、クリスマスっていう時期がまた……いろいろ期待しちゃうんだよねぇ」

「……私より希沙さんのほうが楽しそう」


呆れ気味の笑いをこぼすほのかちゃんだが、嬉しいに違いないのは明らかだ。特別なひとときを満喫してきてほしいし、あわよくば藪さんの気持ちが傾いてほしい。


密かに願いつつ話している最中、ロッカーにハンカチとティッシュを忘れてきたことに気づいた。ここの袴にはポケットがついているので、これらは常に入れている。

ディナーが始まるまでにはまだまだ時間があるので、急がず更衣室に向かった。

そしてドアを開けようとしたとき、中から話し声が聞こえてきて動きを止める。
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