見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

俺にありとあらゆることを教えたのは主に女性陣で、厳格な祖母が亡くなってからは母がその意志を受け継いだかのごとく、厳しくしつけられた。

辛いことがあったとき、それを見せないよう無理に笑っていたら『へらへら笑うな』と注意され、逆に涙してしまったときは『泣くのはみっともない』と言われて。

感情を抑えるしかないと悟った結果、次第に顔に出すことが少なくなり、今に至る。

つい険しい顔をしてしまうのは、幼い頃に身についた、なにかを考えたり堪えるときの癖だったりする。

仕事で忙しくあまり関わることがなかった父と、口うるさい母との生活は、決して楽しいものではなかった。


そんな息苦しさを唯一紛らせてくれたのは、生前の祖父と煎茶を飲む時間である。

悠久流を学んでいた彼から、趣味程度に煎茶道の作法を習うのはまったく嫌ではなく、むしろ心が安らかになるのを感じた。

それは、祖父の意外と茶目っ気のある性格のせいもあるが、おそらく礼儀以外にも生きていく上で為になることをたくさん教えてもらえたからだろう。

その中で、今でも大事にしていることがある。