見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
クマがそれを弄る様子が面白いのか、男の子の泣き方は次第に落ち着き、ぬいぐるみや雑貨に興味を示すようになった。

ホッとして改めて彼を見ると、真ん丸のほっぺやつぶらな瞳、たどたどしい動きの小さな手がとても愛らしい。

幼い子を間近で見たのはいつぶりだろう。……こんなに可愛い生き物だったか?

なんだか胸の柔らかい場所がくすぐられる感覚を抱きつつ、しばし付き合っていると、赤ん坊をおんぶした女性が名前を呼んで駆け寄ってきた。

必死な顔でやってくる彼女に気づいた男の子は一気に笑顔になり、「ママ!」と元気な声を上げてそちらに走っていく。

無事再会を果たせた親子はしっかり抱きしめ合い、どちらも安堵の表情が広がった。

母親の女性は俺に深く頭を下げて何度もお礼を言い、男の子は小さく手を振って去っていく。

それにつられて手を振り返したあと、俺の顔には自然に笑みが浮かび、心が信じられないほど温まっていることに気づいた。

……子供って、ものすごく可愛くて癒されるんだな。世話はかなり大変そうだとたった数分で実感したが、それを上回る父性愛みたいなものを感じられた気がする。
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