見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
華やかな着物の生地や日本刀がインテリアとして飾られた、和風かつ洒落たその部屋に上がるなり、俺は早急に問いかける。


「希沙はどこだ? 会っていたんだろう」

「見ての通り、ここにいないのは確かだよ。婚約者なのに知らないんだ?」


嫌味っぽく言われてカチンとくるが、それは事実なので特に反論はしない。

富井は憐れむように眉を下げて微笑む。


「まあ、無理もないか。希沙ちゃん、結婚を悩んでるみたいだったし」


その言葉にはピクリと反応し、彼を凝視してしまう。希沙がそんなことを話したのだろうか。


「彼女、ものすごく辛そうな顔してここに来たんだよ。イチとの家から逃げて、俺のところに助けを求めにね。でも安心して。俺の腕の中で優しく、しっかりと癒してあげたから」


意地の悪い笑みを浮かべるこの男に、これまでにないほどの嫉妬心と怒りが込み上げる。

希沙が逃げてきたから抱きしめたっていうのか? 冗談じゃない。他の男の手が彼女に触れるのを想像しただけで吐き気がする。

無意識に拳を握りしめる俺に、富井はさらに容赦のない言葉を投げてくる。


「お前との子作りに疲れたんじゃないの。これで彼女もわかっただろ。無理して子供を産ませられる家に嫁いでも幸せにはなれない。俺のほうがよっぽど──」
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