見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「ずっと前に珍しい紋だったから調べたことがあって、そのときに三条家の女性がつけていたものだって聞いた気がする。昔のことですっかり忘れてたよ」


三条というのは初めて聞く苗字だ。祖母の旧姓だろうか。

富井さんは難しい顔をして、さらに驚くべきことを口にする。


「その三条家も華族だったはずだよ。昔は華族同士で結婚することが多かったから、もしかしたら希沙ちゃんのお母さんも……」

「嘘……!」


富井さんの話が本当なら、私のお祖母ちゃんやお母さんも旧華族だったっていうの? そんなこと、想像もしなかった。

唖然とする私に、彼が怪訝そうに問いかける。


「なにも聞いてないの?」

「はい……。祖母は亡くなっているし、母はずいぶん前に離婚していて、実家のことをあまり話してくれなかったので」


語ろうとしなかったのは、あまりいい思いをしなかったから? もしや、母の離婚の原因に家柄のことも絡んでいるのだろうか。

黙考していると、富井さんが硬い表情でこんなことを言う。


「イチが求婚したのは、君が三条家の末裔だと知っていたからだったとしたら、どう思う?」
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