見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「……俺は、希沙の不安をなくすにはどうしたらいいかを模索するばかりで、君の気持ちにちゃんと寄り添えていなかったな」


彼は反省するような調子で呟いた。〝そんなことない〟と声をかけたかったが、彼はすっと視線を上げ、次いでこんなことを話し始める。


「昼間、京都駅で迷子の子供に会って、その子の母親が来るまで少しだけ相手をしてたんだ」

「え……周さんが?」

「そう。クマのパペットで」


無表情で手を動かす彼につい吹き出してしまうけど、それ以上にこの堅物さんが子供と戯れていたのかと想像すると、面白いしキュンとする。

見たかったな、と思いながらクスクス笑う私に、周さんも表情を緩めていた。


「子育ての大変さは、実際に体験しないとわからないんだと実感したよ。幸せにする覚悟はできてると言うだけなら簡単だよな。女性は特に不安になるだろうし、希沙が悩むのも当然だ」


迷子の子に手を焼いたのであろう彼は、とても優しい目をして「でも」と続ける。


「それと同時に、子供の可愛さも知った。俺と希沙との子だったら、どれだけ愛おしいんだろうなって」


どうやら、子供と触れ合ったことで心境の変化があったらしい。
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