見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
『自分の子を愛せるかどうかは、産まれてみないことにはわからない』と言っていたのに、想像だけでわが子を愛でているような気さえする。

それは私も同じで、あのネガティブな気持ちはなんだったんだろうと思うくらい、心が丸く、温かくなっている。


「私もね、さっき夢を見てたんです。赤ちゃんの手を握って、周さんと笑ってる夢」


天使みたいだと感じたあの子は、きっとまだ見ぬ私たちの赤ちゃんだ。性別も、顔もはっきりとはわからなかったが、とにかく可愛かった印象がしっかり残っている。


「すっごく幸せだった。これまで抱えてた暗い気持ちなんてなにもなくて、ただただ愛おしくって……目が覚めた今、現実にしたいって心底願ってる」


たかが夢ではあるが、疑似体験をしたくらいの影響があった。自分の子を〝愛せるかな〟じゃなく、〝愛したい〟願望が芽生えている。

こちらを見つめる周さんの綺麗な瞳と、視線を絡ませる。


「だから──」


〝あなたと家族を作りたいです〟と、以前とはまた違う強い想いを今一度伝えようとした、そのときだ。

ノックの音がしてから病室のドアが開き、白衣に身を包んだ中年の男性医師が現れた。検査の結果が出たらしい。
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