見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
珍しく驚きを隠せない様子で呆然とする周さんを、私は瞳一杯に涙を溜めて見つめる。


「周さん、私……この子に会いたい」


唇からこぼれたのは、心からの想い。

彼は一瞬、込み上げるものを堪えるような顔をして腰を上げ、たまらないといったふうに私をしっかりと抱きすくめた。


「俺もだ」


耳元で、感情がこもった温かい声が響く。すっかり馴染んだ腕の中も、とても心地いい。


「希沙にも、この子にも、俺と生きる人生を絶対に後悔させない」


誓うように口にされた力強い言葉に感極まって、瞳のふちから大粒の涙がこぼれ落ちた。

彼は片腕で私を抱いたまま、濡れた頬を指で拭い、真剣な眼差しで捉える。


「俺はいつでも、どんな君も愛しているし、力になる。それを忘れないでくれ」


胸が一杯で「うん」と頷くことと、ぬくもりを求めて唇を寄せることしかできないけれど、落ち着いたら私もあなたを愛する気持ちが溢れていることをしつこく伝えよう。

これから先、再び不安になったり、自信をなくしたりすることが必ずあるだろう。

そうなったとき、私ひとりで頑張らなくてもいいんだと、周さんのおかげで当たり前のことに気づかされた。親になるのは、私たちふたりなのだと。

しょっぱくて甘いキスを繰り返しながら、今はただ、お腹の中の赤ちゃんが無事に育ってくれることをひたすら願った。

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