見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「あー、なんか私までドキドキする。ほのかちゃんの花嫁姿、綺麗だろうな」


一旦リビングへと移動しながら、ウェディングドレスを纏った彼女を想像して頬を緩める私に、周さんがじっと視線を向ける。


「希沙はいつも綺麗だ。俺は毎日そう思っている」


涼しげな顔で甘すぎる発言をさらっと口にするところは、出会った頃と変わらない。私の、おだてる言葉を素直に受け取って喜んでしまう単純なところも。

くすぐったさを感じつつ「ありがとう」とはにかむと、周さんは私の耳に顔を近づけて囁く。


「今夜、この着物を脱がすのも楽しみだ」


突如セクシーな声が吹き込まれ、心臓がぴょこんと跳ねた。脳内では、夫婦の甘い時間の恥ずかしい映像が再生される。

子供が産まれてからも、浴衣を乱し合って戯れる夜をたびたび過ごしている。母親になった私を、彼は前と変わらずたっぷり愛してくれるのだ。

今の発言もその予告なのかもしれないが、半分は私をからかって楽しんでいるに違いない。ちょっぴり悔しい気持ちと照れ隠しとで、茶化したくなる。


「時代劇で見る〝あ~れ~〟っていうのやりましょうか」

「それは萎える」


クールな表情で拒否する彼に、私は声を上げて笑った。
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