見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
彼も私の家族を気に入ってくれたのかな、とほっこりしたのもつかの間、そっけない言葉が投げられる。


「もしもこれからの生活に疲れて逃げたくなったら、いつでも帰ればいい」


そのひとことはなんだか突き放されたように思えて、若干心が強張る。

私は、簡単に音を上げるような薄っぺらな覚悟でついてきているわけではない。逆に、あなたはその程度の気持ちなんだろうか。私が逃げてもいいの?


「いえ、私は──」

「そのときは、俺が必ず連れ戻しに行く」


物申そうとした瞬間、しっかりとした声に遮られて口をつぐんだ。そう来るとは思わず、目をしばたたかせる。


「君が何度逃げても捕まえるつもりだ。まあ、そうならないのが一番だが」


淡々とした中に執着心を露わにされ、なんとなく照れてしまう。この人にとっては、ただ〝せっかく見つけた面白そうな婚約者〟がいなくなったら困るだけだろうに。

そうわかっていても嬉しく感じるのは、たぶん執着されるほど男性に興味を持たれたことがこれまでになかったからだ。
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