見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「琴と、(しつ)という古代中国の弦楽器の音がよく合うことから、夫婦仲がとてもいいことのたとえとして使われている」

「なるほど……。素敵な言葉」


きっと昔から使われているのだろう。古風でなんとなくロマンチックな響きだなと思い、ふふっと笑みをこぼした。

すると、右手は髪に差し込まれたまま、腰に回されていた左手が移動して、次は頬に触れる。

彼の美しい顔が目の前にあり、初めて見る、そこはかとない優しさを交らせた情熱的な表情にも胸が高鳴る。


「君ともそうなりたいものだな。義務だとか責任だとか、煩わしいものは無視して。君の心も身体も、本能のままに求めたい」


昼間は足りなかった甘さがたっぷり補充された言葉に、ドキドキが止まない。私も、この堅物な彼を夢中にさせてみたい願望が生まれ、こくりと頷いた。

今、お互いの気持ちが同じラインに合わさった気がする。それがズレると、喧嘩になったり不満が溜まったりするんだろう。

そうなったときはまた並ぶ努力をして、できるだけ均等を保ちながら歩んでいく。これの繰り返しが結婚生活なのかな、となんとなく思った。

とても面倒だけど、そういう相手がいるのは幸せなことなんだろうな、とも。
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