お見合い相手のお姉さん・・・好きになってもいいですか?
「納得しないなら、今ここで葉菜に電話してもいいか? 」
「はぁ? 」
「お前の目の前で、葉菜にちゃんと別れを告げれば納得してもらえるのか? 」
「そ、そんな事言ってない! だって・・・葉菜と結婚するつもりで、交際してたんでしょう? 」
「初めはそうだったかもしれない。まぁ正直、ここが妥当かと思って返事をしたのが本音だ」
「何それ、適当って事? 」
「そうじゃない。俺は、本当の恋ってのが解らなかったから。相手が、引っ張ってくれるのが楽だとその時は思っただけだ」
紗良はフッとため息をついた。
「お前に会って、俺は本当の恋に気づいたんだよ。初めて会った時、胸がキュンと鳴って。ずっと気になって忘れっれなかったから。お前が仕事でも、他の男と話しているとこ見るたびにモヤっとしたり。避けられると、すげぇショック受けたり。それでもお前の事考えると、胸がいっぱいになって。傍にいると、ほっとする。これが恋だと気づかなかったよ」
「・・・何言っているの・・・こんなオバサン捕まえて。・・・遊んでいるんでしょう? 」
「おれが遊んでいるように見えるのか? 」
「だって・・・」
シレっと、紗良は顔を背けた。
「俺は本気だ。本気だから、お前の事を抱くことが出来たんだ」
顔を背けたまま、紗良は黙っていた。
「分かったよ。お前がそんなに納得しないなら」
結人は携帯電話を取り出した。
チラッと紗良はその様子を見た。
「・・・もしもし葉菜さん? 」
葉菜の名前を聞いてハッとして、紗良は結人の電話を取り上げた。
そして通話を切った。
「やめてよ・・・」
シレっとして、紗良は結人に電話を返した。
「葉菜が幸せになれば、私はそれでいい・・・。私は、面倒な事に時間を使いたくないから。・・・人を好きになるのも、人から好かれるのも面倒・・・。だから・・・」
「あれ? お姉ちゃん? 」
声がして驚いて顔を上げた紗良の視界に写ったのは、葉菜の姿だった。