お見合い相手のお姉さん・・・好きになってもいいですか?
葉菜は嬉しそうに微笑んだ。
「お姉ちゃん。ずっと、私にばかり「早く結婚して幸せになりなさい」って言うけど。いつも自分は身を引いて、せっかくお姉ちゃんの事を好きになってくれた人の事。すぐに突き放してしまから。いつもシレっとして、冷たい言葉を言いうけど。お姉ちゃんは、本当はとても優しくて。人一倍、傷つきやすい人だから。結人さんならきっと、お姉ちゃんの事護ってくれると思うから」
「そうだったのか・・・」
「結人さん、お姉ちゃんの事、よろしくお願いします」
「大丈夫だよ」
結人はグッと胸に込みあがってくるものを感じた。
紗良はいつもシレっとしている。
人を寄せ付けようとしない。
どこか人とは距離を置いている。
それはきっと、病気の事を知られないように、深入りしないようにしているのだろう。
結人は胸につっかえていた事が、すーっと消えてゆくのを感じた。
「今日聞いたことは、俺はまだ何も知らない事にしておく。君から聞かされたと知れば、きっと、彼女は自分をもっと責めてしまうだろうから」
「はい、私も内緒にしておきますから」
「ああ・・・。でも、ごめん・・・俺のわがままで」
「謝る事ないですよ。私、結人さんと別れてスッキリしているんです。私、ずっと好きな人が居るんです。だから、安心して下さい」
姉想いの優しい妹と、妹想いの優しい姉。
きっとこの家の家族はずっと、お互いを思いやり生きてきているんだ。
結人はそう思った。
葉菜の家から帰る為、結人は車を走らせていた。
すると。
重そうな荷物を手に持って歩いている紗良の姿が目に入った。
休みの日の紗良はラフな私服で、長袖のピンク系のティーシャツにジーンス姿に白いスニーカー。
メイクもあまりしていない地味な感じ。
結人は車を路肩にとめた。
車から降りて、結人は紗良に駆け寄った。
紗良は結人に気がづかず前を歩いている。
沢山買い物をしたのか、重そうな荷物を持って歩いてる紗良は、ちょっときつそうな顔をしている。
歩道橋を登ろうとした紗良の手を、結人がそっと掴んだ。
ん? と、紗良は振り向いた。