お見合い相手のお姉さん・・・好きになってもいいですか?


 時々気を使って、結人は一休みしてくれたり、飲み物を買ってくれたりと色々気を使ってくれる。


 紗良はそんな結人の気持ちが嬉しくて、とても素直に笑っていた。



 私、笑っていいんだ。

 喜んでいいんだ。

 楽しんでいいんだ。


 今まで紗良の中で蓋をしてきた思いが、ゆっくりと解放されてゆくのが分かった。



 結人がトレイに行っている間、紗良は一人でベンチに座って待っていた。


「あの・・・お1人ですか? 」

 ちょっと年配の紳士的な男性が、紗良に声をかけてきた。

 紗良は驚いた目をして紳士を見た。


「すみません。とっても素敵な人だったので、声をかけてしまいました。もしよろしければ、一緒にお茶でも飲んでもらえませんか? 」


 これは・・・

 もしかしてナンパ? 

 紗良は初めての事でビックリしていた。



「ごめん、お待たせ」


 結人が戻ってきた。

 紳士はハッとして結人を見た。

「これはこれは、申し訳ございません。彼と一緒だったんですね」

 結人は、ん? と紳士を見た。


「すみません、お1人かと思いまして声をかけてしまいました。とても素敵な方ですね。どうも、失礼致しました」


 紳士はそっと頭を下げて去って行った。


「なに? もしかして、ナンパされたのか? 」

「あ・・・そうみたい・・・」

「しょうがないか、お前目立ってるもん」

「え? 」


 結人はそっと手を差し出した。

 その手をとって、紗良は立ちあがった。


「ちゃんと俺の手を握ってろよ。またナンパされたら、許さないぞ」


 ツンと紗良の額を突いて結人は笑った。

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