お見合い相手のお姉さん・・・好きになってもいいですか?
紗良と初めて会ったのは、結人がアメリカから帰ってきた25歳の時だった。
まだ新人として営業事務にいた紗良。
他の社員と違い、地味で大人しい感じの紗良は、メイクもあまりしないで髪はいつも短く男性的な感じがした。
他の社員とあまりなじもうとしないで、1人で行動する事が多い紗良は、飲み会にも参加する事がなく新人歓迎会も時間より早く先に帰ってしまうくらいだった。
お昼の休憩も1人で過ごしている紗良。
だが、何故か周りは紗良を気にしていた。
紗良は冷たい態度で言葉も淡々としていて、感情を表に出さない。
頼まれれば返事はするが他は喋ろうとしない。
時々体調が悪く休むこともある紗良。
顔色が悪い時もあり、周りの社員も気を使っているが、紗良は平気な顔をしている。
妹の葉菜が結人と交際が決まっても平気な顔をして、何も変わらない顔をしている紗良。
そんな紗良を結人が意識し始めたのは、葉菜との交際が決まった時だった。
「お姉ちゃん。お見合い相手の結人さん。知っているでしょう? うちの会社の副社長よ」
結人との交際が決まり、葉菜は会社の休み時間に紗良の下に結人を連れてきて紹介した。
あまりオープンにはできないと言って内緒話だと葉菜は言った。
「姉の望月紗良です。妹の事、よろしくお願いします」
その時、紗良は初めて笑った顔を見せてくれた。
その笑顔が結人の胸をキュンとさせた。