卑劣恋愛
「簡単じゃないことはわかってる。でも、そうしないとあたしと武はいつまでたっても進展しない」


「そりゃそうだよ。武が好きなのはノドカじゃなくて、千恵美なんだから」


あたしはそんな智樹の言葉を無視した。


「問題はどこに監禁するかだよ。場所を決めて、武をそこに呼び出さないといけない」


「あるいは、武を誘拐して監禁場所まで移動するか、どちらかだな」


誘拐するのはリスクが高すぎると思ったが、いざとなるとそれも視野にいれておかないといけない。


「それに、報酬は高くつくよ?」


智樹の言葉にあたしは動きを止めた。


機械的に首を曲げ、智樹の顔を見つめる。


智樹は笑顔を崩していなかった。


千恵美を襲った時の報酬を思い出すと全身に鳥肌がたつ。


でも、武のためならなんでもやると決めたのだ。
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