卑劣恋愛
「でも、山小屋に呼び出すのはちょっと厳しそうだよな。なんて理由をつければいいか……」


確かにそうなってくる。


夏休み中なら肝試しとでも言えばいいけれど、今は通常授業の最中だ。


「武が必ず来るように誘わないといけないしね……」


そう考えてみると、どうしても千恵美の顔が浮かんでくる。


癪だけど、千恵美からの呼び出しなら武は動いてくれそうなのだ。


「千恵美に頼むか」


そう言ったのは智樹だった。


あたしと同じ考えみたいだ。


「ムカツクけど、仕方ないよね」


智樹の力があれば、千恵美を利用することは容易い。


「あとはいつにするかが問題だけど」


「できればすぐがいい」


あたしは即答した。


この一分一秒だって、武と一緒にいられないことが死ぬほど辛いのだ。


待っている暇なんてなかった。
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