卑劣恋愛
☆☆☆

翌日、あたしはのんびりと朝食をとっていた。


「お弁当箱、また忘れたの?」


眉を寄せて聞いてくる母親にあたしは「あ、そうだった」と、呟いた。


昨日は楽しい計画を立てていたから、お弁当箱のことなんてスッカリ忘れてしまっていたのだ。


「ごめん、忘れてた」


「もう! この時期に何日も放置してたら虫が湧くわよ?」


それは大変だ。


学校内で虫騒動なんてことになったら、あたしも嫌だ。


「わかった。今日は忘れないように持って帰るよ」


あたしはそう言い、自分の手の甲にマジックで《お弁当箱》と、書き記した。


あたしと母親がそんなやりとりをしていても、父親は上の空だ。


昨日書斎でなにをしていたのかわからないけれど、すっかり意気消沈してしまっている。


「お父さん、ご飯食べないの?」


お箸を持ったまま動かない父親へそう聞く。


すると父親はあたしの声に我に返ったような顔をして「うん、食べるよ」と、返事をしたのだった。
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