卑劣恋愛
「真由子の方はどうなの? 好きな人と」


あたしは少し前真由子に恋愛相談をされたことを思い出し、そう聞いた。


あれから、真由子からはあまり進展したと聞いていない。


「まぁまぁかな? 徐々に距離を縮めて行けたらいいなって思ってるよ」


真由子は自分の席につき、日誌を机の中にしまいながら答えた。


「徐々にかぁ、時間がかかりそうだね」


あたしはそんな風にのんびりしていられない性格だった。


だって、のんびりしている間に相手が他の誰かと付き合いはじめるかもしれない。


最悪の場合、転校していく可能性だってゼロとは言い切れないのだから。


「相手の気持ちだって重要だと思うしね」


「そんなの、両想いだってわかればいいだけじゃん」


「え……?」


キョトンとした表情になる真由子。


「相手のことをずっと見てればわかるよ? 話す時の表情とか、声のトーンとか」


「そう……?」


「そうだよ! あたしは武をずっと見ていたからそれが理解できるようになったの! あぁ、これは両想いなんだなって、実感できた!」
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