卑劣恋愛
☆☆☆

「上手く行ったぞ」


昼休憩中、あたしと智樹はあの渡り廊下へ来ていた。


ここで千恵美が襲われたのだと思うと、なんだか不思議な気分だった。


「ありがとう。千恵美はちゃんと武に声をかけてくれそう?」


「もちろんだ。武に伝えたいことがあるけれど、自分じゃ言いにくい。だから千恵美に手伝ってほしいんだって、言っておいたよ」


好きな人から頼りにされたら、誰だって嬉しい。


千恵美は喜んで武を呼び出すことだろう。


「千恵美はなにか言ってなかった? 山小屋に呼び出すなんてちょっと変わってるとか。どうして千恵美の名前を使って呼び出さないといけないのか、とか」


「あぁ、不思議がってたよ。でも大丈夫俺が口止めをしておいたから」


智樹は『俺』という部分を強調して行った。


確かに、千恵美は智樹のお願いならどんなことでも聞くだろう。


見知らぬ男2人に抱かれることだって、いとわないくらいなのだから。


千恵美の異常な愛情が、今役立っていることになる。
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