卑劣恋愛
手前の壁際には布団が二組、折りたたんだ状態で置かれている。


「電気も水道もガスもあるよ。ただ、スマホの電波はちょっと届きにくい」


そう言われてあたしは自分のスマホを確認した。


確かに、建物内だと電波は1つしか立っていない。


「平気だよ。スマホなんてここでは使わないから」


あたしはそう言ってスマホをポケットにしまった。


武のスマホだって、すぐに取りあげる予定だ。


それよりも、食材を保管しておく冷蔵庫がないのが少し不便そうだ。


キッチンがあるということは、武にあたしの手料理をたんまりと食べてもらえるチャンスなのに。


あたしは食べてもらえなかったお弁当を思い出して、舌打ちをした。


まぁいっか。


武の監禁に成功すれば、あとの時間は山ほどある。


冷蔵庫を買って設置する時間くらいあるということだ。

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