卑劣恋愛
「ありがとう智樹。あとはあたし1人で平気だから」


「本当に? 俺、一緒に小屋の中で待機するよ?」


「そう言われても、この小屋の中には隠れる場所がないじゃん」


あるのは布団だけだ。


その中に隠れるとしても、ちょっと無理がある。


「わかった。それならなにかあったら大きな声を出して? もし声を出せなかったら、壁を叩いてよ。音は外まで聞こえてくるから」


心配性な智樹にあたしは少々うんざりして来てしまった。


これから武と会うだけなのに、危険なことなんてあるはずがなかった。


たとえ襲われたとしても、それはあたしにとって本望だった。


「わかったわかった」


あたしは智樹を適当にあしらい、小屋の外へと出したのだった。
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