卑劣恋愛
手を伸ばして捕まえようとしても、素早く身をかわされてしまった。


思わず、チッと舌打ちをした。


「布団、敷こうか?」


「は? なに言ってんだよお前」


「変な意味じゃないよ? 床に直接座ると、お尻が痛いでしょ?」


あたしはそう言いながら布団に手をかけた。


しかし、それを武が止めたのだ。


「お前さ、本当のこと言えよ」


あたしの肩を痛いほどに掴んで言う武。


あたしはその武の手を優しく包み込んで握りしめた。


咄嗟に手をひっこめようとするけれど、あたしは力を込めてそれを阻止した。


「一緒に寝てもいいんだよ? それが武の望みなら」


武を見上げ、自分の本心を口にする。


そしてニッコリとほほ笑んだのだけれど……次の瞬間、わき腹に強烈な痛みを感じてあたしは布団の上に倒れ込んでいた。
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