卑劣恋愛
武はあたしと違い、ガムテープで口を塞がれている。


「なに、どういうこと?」


「中の様子がおかしいから確認しに来たんだ。そうしたらコイツがノドカのことを運び出そうとしているところだった」


あたしは武にスタンガンを押し当てられたときのことを思い出した。


思い出したように横腹に痛みが走って顔をしかめる。


「コイツはノドカの事を山に埋めるつもりだったんだ」


「え……?」


あたしは驚いて武を見た。


武はあたしとは視線を合わせないようにしている。


「邪魔者には消えてもらいたい。そう言ってた」


「邪魔者?」


あたしは信じられない気持ちで武を見つめた。


あたしは今まで何度も何度も武のことを思って行動してきた。


お弁当だって、早起きしてお迎えだってしてきた。


でも、それ相応の付き合いができていると感じたことはない。


武が照れ屋だから仕方ないと、自分に言い聞かせて我慢してきたのだ。

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