卑劣恋愛
「報酬じゃなくても、なんでもできるよね?」


途端に智樹はねばりつくような口調になり、あたしの上に馬乗りになってきた。


グッと顔が接近して来て、智樹の息が首筋にかかった。


「なにする気!?」


「そんなの、言わなくてもわかるだろ」


智樹はそのままあたしの首筋を舐め上げた。


まるでナメクジが這っているような感覚に全身に鳥肌が立ち、吐き気が込み上げて来る。


ふと視線に気が付いて顔を向けると、あたしと同じように横倒しになった武がこちらを見ているのがわかった。


「やめて……! 武の前でそんなことしないで!」


あたしが汚されたと知れば、武に嫌われてしまうかもしれない。


そんな恐怖心が湧いて来た。


「嫌われるなんて、そんなの今更だろ」


「何言ってんの! あたしは武に嫌われたくない、別れたくない!」


必死に叫んで身をよじる。


すると、武はあたしから視線を外して大きく息を吐きだした。
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