卑劣恋愛
「チャイムを鳴らしただと?」


武が口元をヘの字に歪めて聞いてくる。


「そうだよ? だって、いくら待っても出てこないから、心配するでしょ?」


「お前、俺の親と会ったのか?」


「もちろん。優しそうなお母さんだね」


あたしは昨日会った武のお母さんを思い出してほほ笑んだ。


小柄で色白で、花柄のエプロンがとても良く似合う人だった。


「目元が武に似てるよね。クリッとして大きくて」


「いい加減にしろよ!!」


あたしが話している途中で武が大声を張り上げた。


あたしは驚いて立ち止まり、唖然として武を見つめる。
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