卑劣恋愛
全身が痛むようで、時折顔をしかめている。


「まだ武と付き合ってると思い込んでるのか……」


智樹はブツブツと文句を言いながらあたしの上から体をどかした。


それと同時にあたしはホッと息を吐きだす。


たとえ智樹に怪我されたとしても、それは武のいないところが良かった。


「仕方ないな。やっぱり先にこいつをやるか」


智樹はバキバキと指の骨を鳴らして武へ向き直った。


武の顔が一瞬にして青ざめる。


「いいよなぁお前は、ここまでノドカに好かれててさぁ!」


智樹は今までのストレスを発散するように叫び、武の体を蹴り上げる。


腹部を蹴られた武は胎児のように丸くなって身を守る。


「千恵美なんかのどこがいいんだよ?」


そう言い、蹴る。


「教えてやろうか? 俺、学校の渡り廊下で千恵美とヤったんだぞ?」


そう言い、蹴る。


「信じらんねぇだろ。あいつすぐに足開いてさぁ! まじ、簡単だったんだぞ!」


そう言い、蹴る。


武の目がうつろになり、それでも智樹を睨み付けていた。
< 140 / 262 >

この作品をシェア

pagetop