卑劣恋愛
ちょっと、もういいでしょ?


そう思っても、声にならなかった。


智樹のやられるがままになっている武を見て、ゴクリと生唾を飲み込む。


武を自由にしていいのはあたしだけだ。


他の誰でもない、このあたしだ!


武を監禁しておけば、どんなことでもできる!


やがて武はグッタリと目を閉じて動かなくなった。


「……死んだの?」


震える声で聞くと、智樹は左右に首を振った。


「そんなに簡単に死なないよ。気絶しただけだ」


「そう……」


武の顔はパンパンに腫れ上がって見る影もなくなっている。


武をこんな目に遭わせた智樹へ怒りを感じると同時に、羨ましさが生まれていた。


早く、あたしも武を自由にしたい!


「さて、邪魔者は眠ってくれたし、これからどうしようか?」


智樹が優しい声になってあたしの隣に座った。
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