卑劣恋愛
武は目を覚まさないし、下手をしたらこのまま死んでしまうかもしれないんだ。


ガムテープで口を塞がれているから、窒息してしまうかもしれない。


「ねぇ、お願い。絶対に逃げたりしないから……」


甘ったるい声でそう言った時、小屋のドアが開いた。


智樹がハッと顔を向ける。


まさか、ドアに鍵をかけていなかったんだろうか。


あたしと武を拘束したから油断していたのかもしれない。


「助けて!!」


あたしはドアの向こうにいる人物へ声をかけた。


智樹の体が邪魔になって誰が立っているのかわからないけど、きっと智樹の親とかだろう。


ここは普段、智樹の親族しか使用しないのだから。


そう、思ったのだけれど……。


「千恵美!?」


智樹の声にあたしは驚いて目を見開いた。
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