卑劣恋愛
「智樹、あたしのストーカーを退治してくれたんだね!」


途端に千恵美は智樹に抱きついてそう言ったのだ。


あたしは唖然としてその光景を眺める。


「ストーカーって……どういうこと?」


聞くと、千恵美は冷めた視線を武へ投げかけた。


「こいつだよ。学校にいる間中あたしの視界の中をうろつきまわってさ、本当にキモイんだよね!」


千恵美は憎々しげな表情を浮かべ、武の背中を蹴り上げた。


「武が千恵美のストーカー……?」


「そうだよ。ノドカだって気が付いてたんでしょ? 武の隠し撮りをすると、必ずあたしの姿も写ってたはずだよ?」


そう言われて、あたしは隠し撮り写真を思い出していた。


確かに、毎回千恵美が写りこんでいた。


でもそれは千恵美が武にまとわりついていたからだ。


……いや、そうなんだと思い込もうとしていたからだ。
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