卑劣恋愛
「た……武はサッカー部で忙しいから……千恵美に構ってる暇なんかないし」


強気で言おうとしたのに、自分の声が震えていた。


智樹に何度も言われていた事実が、今さら胸に突き刺さる。


「確かに、部活の時だけはあたしも解放された。でもこれを見て」


そう言って千恵美が学生鞄から取り出したのは手紙だった。


何枚も、何十枚も出てくる。


そこに書かれている文字は、あたしも見覚えのある筆跡だった。


「これ全部武からの手紙。学校の机や下駄箱、家のポストに毎日投函されるの」


バラバラと床に落とされたそれは、数えきれない紙ふぶきのようだった。


『好きだ』


『愛してる』


『今日も綺麗だね』


『千恵美は世界一だ』


あたしが武に言って欲しかった言葉が、そこには数えきれないほど存在した。
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