卑劣恋愛
千恵美はわざと自分の胸を智樹の腕に押し当てている。


「ねぇ、この前あたしのこと抱いてくれたじゃん。あんな場所だったけどさ、智樹の気持ちはちゃんと伝わったよ? あたし達両想いなんだから、恥ずかしがる必要ないよね?」


「冗談じゃねぇぞ! なにが両想いだ!」


智樹は必死で千恵美を振り払っている。


「どうして? じゃあなんであたしを抱いたの?」


「そんなの……」


智樹は途中まで言い掛けて、口を閉じた。


あの時の報酬はすでにキスという形で渡してあるから、言えないのだろう。


それを確認してあたしはニヤリと笑った。


智樹がここまで従順になってくれているのなら、まだ逃げ出すチャンスはあるかもしれない!
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