卑劣恋愛
あたしは大きく呼吸を繰り返し、ひとまず助かったのだということに安堵した。


しかし、あたしはまだ拘束された状態だ。


油断はできなかった。


「ねぇ、ノドカ。智樹はあたしのものだからね?」


千恵美があたしの横に座り込み、そう言った。


あたしは何度も釘を縦に振る。


「もちろんだよ、わかってる!」


実際、あたしは智樹になんて興味がない。


ただ都合よく使えそうだから一緒にいただけだ。


「一度智樹に質問したことがあるんだよね」


「質問って……?」


「ノドカのどこが好きなのかって」


こんな状態なのに、千恵美は教室内で会話をするのと同じトーンで話をしている。


その様子に背中が寒くなった。


「智樹言ってたよ? ノドカの顔が好きなんだって」


「そう……なんだ……?」


それは初耳だった。
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