卑劣恋愛
顔が好きというだけで、よくここまでやったものだ。


「だからさぁ、あたし考えたんだよねぇ」


千恵美は床に投げ出していた鞄を引き寄せて、中からペンケースを取り出した。


「あたしの顔をノドカに似せれば、智樹と付き合えるのかなぁって」


「整形するってこと?」


「うん。でも、整形ってすごくお金がかかって、すぐにはできないでしょ? でもね……もうひとつ方法があった」


千恵美はペンケースの中からカッターナイフを取り出して、刃を出し始めた。


小屋の中にカチカチカチカチッと音が響く。


その音に嫌な予感がして、背中に汗が流れて行った。


「それを……どうするつもり?」


質問する声が震えた。


千恵美は笑顔を浮かべたまま、あたしに近づいてくる。


片手にはカッターナイフ。
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