卑劣恋愛
あたしは恐る恐る千恵美の様子を確認する。


「そうだった、こんなことしてる場合じゃないんだった」


そう呟いて武へと向き直る千恵美。


そして持っていたカッターナイフを使って武の拘束を解いたのだ。


「千恵美、俺を助けてくれたんだな!」


武は歓喜の声を上げるが、手足はまだ痺れているようで寝転んだ状態から起き上がれないでいる。


「千恵美! あたしのロープも解いて!」


「はぁ?」


千恵美の冷めた目があたしを射抜く。


あたしはその冷たさにゴクリと唾を飲み込んだ。


「お願い! 助けて!」


「なんで?」


「なんでって……武のことは助けたじゃん!」


千恵美は武のことを自分のストーカーだと言っていた。


そんな男のことを助けたのだから、あたしのことだって助けられるはずだ。
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